発想力強化メニュー:SCAMPER思考で企画を生み出す具体的な手順
日々の業務において、新しい企画の立案や既存サービスの改善、あるいは魅力的な広報資料やプレスリリースの作成といった場面で、「アイデアが枯渇した」「いつもの発想から抜け出せない」と感じることは少なくありません。特に限られた時間の中で質の高いアウトプットが求められるビジネスパーソンにとって、発想力のマンネリ化は大きな課題となります。
このような状況を打開し、表現力と発想力を同時に高めるための具体的な「筋トレメニュー」として、今回は「SCAMPER(スキャンパー)」という思考ツールをご紹介します。SCAMPERは、既存のアイデアや対象に対して特定の問いかけをすることで、新たな視点や発想を引き出すためのフレームワークです。
SCAMPER思考とは
SCAMPERは、以下の7つの英単語の頭文字を取ったもので、それぞれが発想を刺激するための異なる方向性を示唆しています。
- Substitute(代用する)
- Combine(組み合わせる)
- Adapt(適合させる)
- Modify(修正する)、Magnify(拡大する)、Minify(縮小する)
- Put to another use(他の用途に使う)
- Eliminate(取り除く)
- Reverse(逆にする)、Rearrange(再配置する)
これらの要素は、新しいアイデアを生み出す際に検討すべき変化や視点のリストとして機能します。企画中のプロジェクト、執筆中の文章のテーマ、あるいはサービス全体など、思考の対象となるものに対して、これらの問いかけを順番に、あるいはランダムに適用していくことで、普段は思いつかないような発想にたどり着く可能性が高まります。
SCAMPERをビジネスに応用する具体的な手順
ここでは、具体的なビジネスシーンにおけるSCAMPERの活用例を交えながら、その手順をご紹介します。例えば、「新しい顧客向けセミナー企画」について考えてみましょう。
1. 思考の対象を明確にする
まずは、発想の対象となる具体的な課題や既存のアイデア、サービスなどを明確に定義します。 例:「ターゲット顧客(例:中小企業経営者)向けの、オンライン開催による新しい製品紹介セミナー」
2. 各要素の問いかけを適用する
定義した対象に対して、SCAMPERの各要素が示す問いかけを行います。それぞれの問いかけから生まれる発想を自由に書き出していきます。この段階では、実現可能性に囚われず、量と多様性を重視することが重要です。
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Substitute(代用する):
- 「オンライン開催を別の形式に代用できないか?」(例:オフライン、ハイブリッド、オンデマンド配信、個別相談会形式など)
- 「製品紹介を別の内容に代用できないか?」(例:導入事例紹介、業界トレンド解説、他社比較、課題解決ワークショップなど)
- 「講師を別の人物に代用できないか?」(例:顧客の声、著名な専門家、社員同士の対談形式など)
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Combine(組み合わせる):
- 「製品紹介と別のコンテンツ(例:ワークショップ、ネットワーキング、個別相談)を組み合わせられないか?」
- 「セミナー形式と他の情報発信手段(例:ブログ記事、動画コンテンツ、資料ダウンロード)を組み合わせられないか?」
- 「複数の製品やサービスを組み合わせて一つのセミナーとして提供できないか?」
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Adapt(適合させる):
- 「既存の成功事例(例:他社のセミナー、研修プログラム)をこのセミナーに適合させられないか?」
- 「現在の顧客ニーズ(例:DX推進、人材育成)に合わせて、製品紹介の切り口を適合させられないか?」
- 「ターゲット顧客の業界固有の課題に適合させるために、内容を調整できないか?」
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Modify, Magnify, Minify(修正・拡大・縮小する):
- 「セミナーの時間を修正できないか?」(例:短時間集中型、複数回シリーズ形式など)
- 「セミナーの内容を拡大できないか?」(例:より詳細な技術解説、専門家とのパネルディスカッションを追加など)
- 「セミナーの対象者を拡大できないか?」(例:担当者向けに加え、経営層向けの内容も追加など)
- 「セミナーの規模を縮小できないか?」(例:少人数制のクローズドな形式、個別相談に特化など)
- 「伝える情報量を修正できないか?」(例:製品スペック詳細ではなく、導入後のメリットに焦点を当てるなど)
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Put to another use(他の用途に使う):
- 「セミナーで作成した資料や動画を他の用途(例:Webサイトのコンテンツ、営業資料、社内研修資料)に転用できないか?」
- 「セミナーの Q&A からFAQコンテンツを作成できないか?」
- 「製品紹介だけでなく、業界の啓蒙活動や顧客コミュニティ形成の場として活用できないか?」
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Eliminate(取り除く):
- 「セミナーから製品紹介のパートをなくせないか?」(例:製品に興味を持つ前の潜在顧客向けに、課題解決に焦点を当てた内容のみにする)
- 「質疑応答の時間をなくして、一方的な情報提供型にできないか?」(あるいはその逆)
- 「特定の機能や特徴の説明をなくして、核となるメリットのみに絞れないか?」
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Reverse, Rearrange(逆にする・再配置する):
- 「セミナーの流れを逆にできないか?」(例:製品紹介から始めるのではなく、まず課題提示から始めるなど)
- 「セミナーの参加条件や申込方法を逆にできないか?」(例:無料から有料に、事前申込制から当日参加可能になど)
- 「セミナーの構成要素(例:製品デモ、顧客事例、質疑応答)の順番を再配置できないか?」
3. 生まれた発想を評価し、具体化する
書き出した様々な発想の中から、サイトコンセプトやターゲット顧客のニーズ、そして自社のリソースに照らし合わせ、有望なアイデアを選び出します。選んだアイデアは、実現に向けて具体的にどのように進めるかを検討し、詳細を詰めていきます。
例えば、「製品紹介とワークショップを組み合わせる」というアイデアが有望だと判断した場合、「どのようなワークショップにするか?」「ワークショップ形式で伝えるべき製品のポイントは何か?」「必要なツールや準備は?」といった点を具体的に掘り下げていきます。
実践におけるヒント
SCAMPER思考は、一度やれば終わりではなく、継続的に行うことで発想力を鍛える「筋トレ」のような側面があります。
- 習慣化する: 毎週特定の時間、あるいは新しい企画を考える際に必ずSCAMPERの問いかけを行う習慣をつけましょう。
- 視覚化する: マインドマップや付箋などを使って、問いかけに対する発想を視覚的に整理すると、思考が広がりやすくなります。
- 記録する: 生まれたアイデアはすぐに実現できないものも含め、記録に残しておきましょう。後になって別の機会に役立つことがあります。
- チームで活用する: 複数人で行うことで、多様な視点からの発想が生まれ、より豊かなアイデアにつながります。
まとめ
SCAMPER思考は、発想のトリガーとなる具体的な問いかけを提供することで、漫然と考え込むのではなく、意図的に新しい視点を取り入れることを可能にします。日々の業務で「言葉の筋トレ」としてSCAMPERを活用することで、発想のマンネリ化を防ぎ、ターゲットに響く魅力的な企画や文章を生み出す力を着実に高めることができるでしょう。ぜひ、次回の企画や文章作成の際に、このSCAMPERメソッドを実践してみてください。